鎌倉常盤の漢方内科--田中医院

夏のお肌のトラブルに漢方

夏は日差しが1年で一番強く、日焼けや日光過敏症などのお肌のトラブルに見舞われやすい季節です。

また、日焼けの痕や、虫刺されの痕がいつまでも残り、しみやそばかすの原因になることもあるほか、夏にひどくなるニキビもあります。

また、プールで感染するプール熱や、水いぼの他に、ヒトパピローマウイルスで感染するいわゆるイボや、白癬菌の一種である殿風菌でうつる殿風(でんぷう)などの皮膚疾患があります。

また、夏に増悪するアトピー性皮膚炎や、あせもなどもあり、夏は皮膚のトラブルを起こしやすい季節です。

しみ、肌荒れ

さて、前述の「しみ」などですが、いつまでも皮膚に残って気になっている方も多いのではないでしょうか。

漢方ではしみなどをオ血(おけつ:血液の滞りの一つの症状)と考え、お血を改善する薬剤と、しみやイボをとる特効薬で対応してきました。

オ血を改善する薬剤の代表が桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)で、しみやイボをとる特効薬が「ヨク苡仁」(よくいにん:はと麦)です。

桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)は、オ血のある方、しみやにきび、肌荒れに、昔から特効薬として使用されてきました。

にきび

にきび(医学用語では尋常性座瘡と言います)には、漢方では多様な処方薬があり、じゅくじゅくと湿ったタイプのにきびから、乾燥したタイプのにきびや、いつまでも化膿が取れないタイプのにきびに対して、症状に応じて数種類の処方薬があります。

じゅくじゅくと湿って夏に増悪し痒みがひどいタイプなら消風散(しょうふうさん)が、また、顔面を中心にいつまでも続くニキビなら清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)がよく用いられます。

一見、にきびとは関係のない処方でも、体質を改善してゆくことで、にきびの出来にくい体質に変えてゆくことができます。

また、化膿しにくい体質に変えることで抗生剤を使わないで治ることもあります。

プール熱

プール熱(医学用語では咽頭結膜熱と言います。)は、アデノウイルスによる感染性疾患で、目や口腔が赤く腫れ、かなり高熱の出る「夏かぜ」として、現代医学では対処療法で対応するしかないのですが、暑い夏に熱が出るのはつらいものです。

漢方薬では感冒の治療を体質に応じて使用しますので、それを応用して対応します。

水いぼ

水いぼ(医学用語では伝染性軟属腫と言います)は、やはり夏に多い皮膚疾患で、小児に多く、免疫力がついてくると自然と治ることも多いため、様子を見ることも多いのですが、早く治したい時には、前述のヨク苡仁(はと麦)エキスを用います。医療用製剤があり治療に健康保険が使えます。

イボ

同様に、イボ(尋常性疣贅:「じんじょうせいゆうぜい」と言います)にもヨク苡仁(はと麦)エキスの適応があり、医療用製剤での治療が可能です。

殿風

殿風(でんぷう)は武道をやっている方や、思春期から青年期の方に多く見られ、多汗症で高温環境下に生活する方に多い、体幹部の皮膚を中心に起こる疾患で、皮膚の毛包に常在している「マラセチア」という真菌による感染症とされています。

内科的には肥満、糖尿病、甲状腺機能低下症の方に合併しやすいとされています。内科の病気が隠れていないかを調べた上で、皮膚科専門医に調べてもらい、抗真菌薬などで治療することが多いようです。

色素沈着や色素脱色を伴うことが多いため、気になる方は漢方薬での治療を併用することがあります。

アトピー性皮膚炎、あせも

アトピー性皮膚炎も、夏に増悪するタイプでは、多くの漢方処方があり、体質に応じて治療を行います。

頑固な「あせも」には苦参(くじん、ハーブで言うところの「クララ」)を中心とした外用入浴剤があります。昔から桃の葉が用いられてきたのは有名です。

漢方で皮膚トラブルを乗り切ろう

古来の知恵を現代に生かしながら、このような夏の皮膚のトラブルを乗り切るのも一つの選択肢です。  

田中医院 院長 小野村(2018.8.2)

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