鎌倉常盤の漢方内科--田中医院

うつ状態・不眠〜「気」の量と循環について

世の中は、いよいよ新年度に入り、新たに「やる気」をみなぎらせておられる方も多いのではないでしょうか。

ただこの時期は非常に眠くなりやすいし、環境の変化などから、抑うつ症状や不眠なども起りやすく、「五月病」などという言葉も耳にします。

そこで今回は、普段何気なくつかっている「気」をキーワードとして、抑うつ症状や不眠などに関係する漢方薬を解説してみたいと思います。

「気」とは何か

「人気」とか「今日の気分は」などと、世の中には意外にたくさん「気」のつく言葉があふれています。今や「電気」の存在を否定する人はいないでしょうし、ニュースでも「明日の天気は」などと報じています。

この「気」なるものの存在、なかなか実在を証明するのは困難なのですが、昔から漢方の世界では頻用されている言葉です。

漢方を簡単に説明するため、『「気」とは、生命全体を正常に保つためのエネルギー』、もっと簡単にいえば「元気の素」ととらえてしまいたいと思います。

体内をくまなく循環する「気」

漢方では、「気」というエネルギーが絶えず体内を隅々までくまなく循環しているのが本来の姿、というふうにとらえます。

また、「気」には個体差があり、各個人のもっている「気力」にも差があるという立場をとっています。

もう少し詳しく述べれば、「気」にも「先天の気」と「後天の気」の2種類があります。

「先天の気」とは、親から生まれる時、これから生きるための体力として「腎(じん)」に授かった「気」です。

「後天の気」には、この世に生まれた後にその人が食事などを摂り、胃腸などから吸収して得た「水穀(すいこく)の気」と、呼吸などにより肺から得た「宗気(そうき)」があるのです。

このように、元々親からもらった「気」の量が異なる上に、その人がどんな食習慣や生活習慣をしてきたかで、「後天の気」まで変ってきてしまうわけです。

ですから、各個人の「気の量」や「気の循環」の違いによって、選ぶ治療法や生薬が異なってきます。

「気」の循環のイメージはこのように考えられています。

このような各個人の「気の量」、「気の吸収・産生」、「気の循環」が障害された状態が「病気」であると考えることができます。

それでは、不眠症状や抑うつ状態が引き起こされるとき、「気」の量や循環がどのような状態なのか、そしてどんな生薬(漢方)が効果的なのかをこれから詳しくお話しします。

次回へ続く

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